ヒトパラインフルエンザウイルス(phiv-1)は、おもに生後6ヶ月から6歳くらいまでの乳幼児が感染し、乳児肺炎や時として重篤な気管支炎を引き起こす原因ウイルスである。本研究は、アルドラーゼを利用したハイブリッドプロセスにより、パラインフルエンザシアリダーゼ阻害剤の合成を効率よく行い、構造活性の検討を行うことを目的としている。平成14年度は次の課題について検討を行った。 平成14年度は次の課題について検討を行った。 1.酵素によるシアル酸誘導体の固相合成法の検討:酵素法の特徴は緩和な条件下、反応が立体選択的に進行し、保護基の使用が少なく短工程でシアル酸誘導体へと導くことが可能なことである。アルドラーゼ存在下、ManNAcで修飾した樹脂を基質として用いNa pyruvateとのアルドール縮合反応を検討したが、目的とするシアル酸誘導体は得られなかった。今後、ManNAc誘導体を水溶性樹脂に固定化し酵素反応を検討する。 2.フルオラス・タグ法によるシアル酸誘導体の効率的な酵素合成法の検討:最近、環境調和型の合成法として従来の有機合成化学の分離操作の過程を大きく改善するフルオラス法が注目されている。高度にフッ素原子で置換したタグ基を含むManNAc誘導体とNa pyruvateをNeu5Acアルドラーゼ存在下縮合した後、フルオラス溶媒抽出によるシアル酸誘導体の簡易精製法を検討した。その結果、反応液からフルオロ溶媒による直接抽出を試みたが、生成物はフロリナート層に移行しなかった。そこで反応液をBio-Gel P-2による精製を行い収率80%でシアル酸誘導体を得ることができた。今後、フッ素化合物の特性を生かしたフルオロシリカゲルによる分離を検討する予定である。
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