研究概要 |
本研究は・アルドラーゼを利用したハイブリッドプロセスにより、シアリダーゼ阻害剤の合成を効率よく行い、構造活性の検討を行うことを目的とした。1.酵素によるシアル酸誘導体の固相合成法の検討:アルドラーゼ存在下、ManNAcで修飾した樹脂を基質として用いNa pyruvateとのアルドール縮合反応を検討したが、目的とするシアル酸誘導体は得られなかった。今後、ManNAc誘導体を水溶性樹脂に固定化し酵素反応を検討する。2.フルオラス・タグ法によるシアル酸誘導体の効率的な酵素合成法の検討:高度にフッ素原子で置換したタグ基を含むManNAc誘導体とNa pyruvateをNeu5Acアルドラーゼ存在下縮合した後、フルオラス溶媒抽出によるシアル酸誘導体の簡易精製法を検討した。その結果、反応液からフルオロ溶媒による直接抽出を試みたが、生成物はフロリナート層に移行しなかった。そこで反応液をBio-Gel P-2による精製を行い収率80%でシアル酸誘導体を得ることができた。今後、フッ素化合物の特性を生かしたフルオロシリカゲルによる分離を検討する予定である。3.分子内にフッ素原子を含むシアル酸誘導体の合成とシアリダーゼ阻害活性の検討:シアル酸誘導体にフッ素原子を導入した2β,3β-ジフルオロシアル酸誘導体の合成とそれらの阻害活性の検討を行った。シアル酸の4位にシアノメチル基(10a)、カルバモイルメチル基(10b)、チオカルバモイルメチル基(10c)、アミジノメチル基(10d)を持つ4種類のジフルオロシアル酸誘導体を合成し、phiv-1シアリダーダーゼに対する阻害活性を調べた。その結果、10cに最も強い阻害活性が認められたが、その阻害活性の強さは3に比較して低かった。このことからphiv-1シアリダーゼ阻害活性の発現には2,3-デヒドロ骨格の存在が必須であることが示唆された。
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