研究概要 |
重要な不斉炭素-炭素結合形成反応の一つである共役付加反応を触媒的に高いエナンチオ選択性で実現できる新規不斉配位子の開発を目的とし、L-バリノールおよび(R)-ピナフトールを出発物質とするP, N型不斉配位子の設計と合成を行った。まず以前開発したキラル素子β-アミノアルキルホスフィンを用い、ピリジン(またはキノリン)-2-カルボン酸およびピリジン-2-カルボキサルデヒドとの縮合でピリジル基をもつ新規アミド型およびイミノ型のP, N配位子の合成を行った。これら配位子の評価を、ジエチル亜鉛の環状エノン基質(シクロヘキセノン)への銅触媒不斉共役付加反応(1mol%のCu(OTf)_2の存在下)で検討した。その結果、アミド型配位子では60%ee程度であったが、イミン型配位子で90%ee以上(最高95%ee)の高い選択性を得ることができた。一方、鎖状エノンのカルコンについては、環状エノンより選択性は低かったが、イミン型配位子で71%eeの選択性を得ることができた。アミド型配位子のNHをアルキル化した配位子では、アルキル基が小さいほど選択性が向上し、N-Me体が最も良い選択性を示した。さらに本キラル素子の各種スルホンアミド型配位子を合成し同様の共役付加反応で評価した結果、N-(1R)-10-カンファースルホニル基をもつ配位子が最も優れた選択性(73%ee)を示すことがわかった。他の不飽和な基質についても検討し、比較的良好な結果が得られるものもあった。さらに軸不斉ビナフチル骨格にアミノ基とホスフィノ基を有するキラル素子を簡便に合成する方法を開発し、そのスルホンアミド型配位子が、従来高いエナンチオ選択性をあげることが難しかった鎖状エノンのベンジリデンアセトン、類への銅触媒不斉共役付加反応において、84-99%eeの高い選択性を示す優れた配位子であることを見いだした。
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