研究概要 |
本研究は、有機フッ素化合物の合成法の開発を中心に展開してきた昨年度までの実績をさらに発展させて、フッ素置換アルケンの特異的性質に着目した生理活性ペプチドの化学修飾や新規分子構造の酵素阻害剤の創製を具体的な目標として、新規な効率的合成法の開発を検討していくものである。以下に今年度の成果を述べる。 1)ジペプチドの非加水分解性イソスターを指向したフッ素置換オレフィンの合成法の開発については、昨年度の実績のひとつとしてZ選択的なβ-置換γ-フルオロ-β,γ-不飽和エステルの合成法を見いだしたが、2位と5位の相対配置の制御は解決できなかった。さらに検討を加えた結果、銅塩共存下5位が水酸基、4位がジフルオロ置換のアリルアルコール誘導体とアルキルアルミニウムとの反応により完全な立体選択性で目的とする2位へのアルキル基の導入反応が進行することを見いだした。さらに、生成物のデプシペプチドイソスターへの変換も容易に行えることを確認した。5位水酸基のアミノ基への変換などが今後の検討課題である。 2)低原子価ジルコノセン錯体を用いた炭素-炭素二重結合とカルボニル基の分子内カップリング反応として、N-アルケニルカルバメート誘導体が優れた基質となり、特異な分子内エステル基転移反応によりγ-アミノ酪酸や置換ピロリジンカルボン酸などの効率的な合成法を見いだした。 3)新規なホモアリルラジカル前駆体としてヨードメチルシクロプロパン誘導体が合成化学的に極めて有用であることを見いだし、今年度は1,4-ジエンや1,4-エンインとのラジカルカスケード反応によるビシクロ[3.3.0]オクタン骨格の効率的合成法の確立に成功した。今後フッ素系基質への展開を予定している。
|