研究概要 |
クロイソカイメン及びイワクワハゴロモガイから単離された海洋アルカロイドであるハリクロリン及びピンナ酸は、それぞれ血管内皮細胞接着分子(VCAM-1)の産生阻害活性及び細胞質ホスホリパーゼA_2(cPLA_2)阻害活性を示すことが報告されていることから、両アルカロイドは新薬開発のためのリード化合物となり得ることが期待されている。本研究は、アシルニトロソ化合物の分子内エン反応を機軸とするハリクロリン及びピンナ酸の全合成を目的として行われた。 すなわち、分子内にジエンを有するヒドロキサム酸を2-ヨードシクロペンテンより4工程を経て合成し、このヒドロキサム酸に過ヨウ素酸を作用させたところ、反応系内に生成するアシルニトロソ化合物の分子内エン反応がほぼ完全な面選択性を伴って進行し、ハリクロリン及びピンナ酸の共通基本骨格である6-アザスピロ[4.5]デカン誘導体が高収率で得られることを見出だした。ここに得られたアシルニトロソエン反応成績体よりアルケンの接触水素化及び水酸基保護の後、C-7位へのアセチリドの立体選択的導入とヒドロホウ素化を経て所望の相対立体配置を持つを7-シロキシエチル-6-アザスピロ[4.5]デカンを合成した。さらに,この化合物を1-オキソ体に誘導の後、Grignard反応を経由して生成した三級アルコールの脱水,生じた環状アルケンの接触水素化反応により、ピンナ酸類及びハリクロリンの相対立体配置に対応する立体構造を備えた基本骨格構造を立体選択的に構築することができた。
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