研究概要 |
求核的アシル化剤としてのアシルジルコノセン錯体が芳香族イミン誘導体に対しYb(OTf)3-TMSOTfを触媒として用いると、効率よく反応しα-アミノケトン誘導体を収率よく与えることを見いだした。さらに、同様な反応がルイス酸としてのYb(OTf)3-TMSOTf触媒を用いなくてもブレンスッテド酸を触媒とする反応でも進行することを見いだし、最終的には反応系中に一当量の水を添加するのみでも反応が進行すると言う興味ある知見を見いだした。以上の結果は、水で容易に加水分解されるアシルジルコノセン錯体の性質を考えると非常に特徴的な結果と考えられる。また、これらの知見を基にアルデヒド、アミンの混合物溶液にアシルジルコノセン錯体を直接加えると、やはりα-アミノケトン体が効率よく得られることが判明した。これらの事実は、一般に不安定なイミン化合物を単離し反応を行う必要がなく、直接、三成分(アルデヒド、アミン、アシルジルコノセン錯体)を撹拌することによるα-アミノケトン体の合成法を示しており、今後のアシルジルコノセン錯体の高い実用的試薬としての可能性を示している。また、α,β-不飽和アシルジルコノセン錯体はPd(0)触媒の存在下α,β-ynone誘導体との反応では官能基化されたシクロペンテノン誘導体を一段階で与えることを明らかにした。シクロペンテノン誘導体は各種生理活性物質の合成のための有用な合成中間体となることより今後の展開が期待される。一方、α,β-不飽和アシルジルコノセン錯体はケトンのα,β-ジアニオンの前駆体となることを高次シアノクプラートとの反応から見い出しているが、そのα,β-ジアニオン中間体のスペクトルの確認には今のところ成功はしていない。
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