研究概要 |
1.無保護アミノ酸類の安定性およびラセミ化が水溶液と有機溶媒でどのように異なるかを検討した.その結果,無保護アミノ酸類は,塩基性あるいは酸性条件下で加熱するとDMF,DMSO,エチレングリコール等の極性有機溶媒では分解すると同時に回収されたアミノ酸も大きくラセミ化していたが,水溶液中では,ラセミ化,分解とも抑制されることが明らかになった.アミノ酸のような水溶性生体成分が,水を溶媒とした場合に最も安定であるという知見は,合成上の観点ばかりでなく生体内反応との関係からも興味が持たれる. 2.無保護アミノ酸の水を溶媒とした実用的な合成反応の開発を目指し,アミノ酸類の直接プロム化を検討した。60%以上の硫酸溶液にフェニルアラニンを溶解させておき、プロモイソシアヌル酸ナトリウムをブロム化剤として用いた。その結果、ortho-およびpara-ブロモフェニルアラニンがそれぞれ36%、58%の収率で得られた。 3.ベンズ[f]トリプトファンは、インドール-2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤として知られている。我々は、インドールとセリンを反応させた後、アシラーゼで分割を行うことにより2行程で光学活性トリプトファン誘導体を得ることに成功している。この反応を利用して3種のベンズ[e],[f],[g]インドールより、それぞれ対応する光学活性ベンズトリプトファン3種を合成することに成功した。 4.光学活性リゼルギン酸合成の良い中間体である(R)-N-メチル-N-カルボベンジロキシ-1-トシルトリプトファンメチルエステルの効率的な合成法を、我々の開発した合成法で容易に得られるdl-N-アセチルトリブトファンから3行程で得ることに成功した。
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