研究概要 |
1.アジリジンの窒素上の置換基による反応への影響 アジリジンのN上に電子吸引性のあるフェニルまたはベンゾイル基をもつα,β-不飽和γ,δ-エピミノエステル1,2とオレフィンとの光及び熱反応を検討した。その結果、1とアクリロニトリルとの光反応では付加環化体を45%の収率で与えたものの、1の熱及び2の光と熱反応では、アジリジン環のC(γ),N結合が開裂したエナミン誘導体等が得られるのみであった。Nに共役系が置換すると、C(γ),N結合が開裂する傾向にあることが明らかになった。 2.アジリジンの側鎖の置換基による反応への影響 α,β-不飽和γ,δ-エピミノ系のα位へ電子吸引基をさらに導入し、反応を検討した。ジニトリル3及びジエステル4とも今までのアジリジンと同様、アクリロニトリルと光で反応し、3-シアノピロリジン体を与えた。また、3とイソプレン、酢酸ビニルとの光反応では、3位に置換基をもつ付加体が光反応では初めて得られた。 アジリジン環2位の側鎖の電子吸引性を増大させると、電子欠乏性オレフィンとの付加体の収率が低下することが明らかになった。 3.アジリジンの3位に置換基を有する誘導体の反応 本反応の反応性及び機構を解明する目的で、3位にメチルまたはフェニル基を導入した化合物5、6で反応を行った。その結果、5では光及び熱反応においてアジリジン環の開裂および付加環化が協奏的に進行していないことが明らかになった。一方6では、光及び熱反応において協奏的に反応が進行したと思われる付加体が得られた。また、p-シアノフェニル基にした化合物でも電子過剰性オレフィンとは反応しなかった。 また,5,6を酸素雰囲気下光照射すると,ジオキサゾリジンおよびそれを経由したと思われる生成物が得られ,このことから一連の本反応がビラジカル性の強い中間体を経由して進行していることが示唆された。
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