研究概要 |
希土類金属塩が誘起する連続的環化反応による多環性化合物の合成法開発と天然物合成への応用を目的に本研究を行った。まず、α,β-不飽和エステル、ケトン(またはアルデヒド)及びエステル(または脱離基)を備えた各種鎖状化合物を合成し、希土類金属塩による環化反応を検討した。その結果、数種の(2Z)-2-methyl-7-oxodec-2-ene-1,10-dioic acid誘導体を基質とし、SmI_2を用いた場合、還元的環化-Claisen縮合-ラクトン化が連続的に進行し、gibberellin類のA/B環に相当する6-methyl-10-oxatricyclo[4.3.2.0^<1.5>]undecane-7,11-dione誘導体を与えた。また、アルデヒド、α,β-不飽和エステル、エステルの順に配置された鎖状化合物を用いると、イチョウの葉の成分ginkgolideの部分構造であるγ-ラクトンが接合したspiro[4.4]nonane環を合成できることが分かった。類似する方法でbicyclo[4.3.0]nonane環も合成できた。次いで、本方法のgibberellin類合成への応用を検討した。まず、C/D環部の効果的構築について検討し、2-cyclohexenone誘導体とアレンとの光環化反応によるbicyclo[4.2.0]octane誘導体の合成、環開裂による(3-cyclohexanone)acetoaldehyde誘導体への変換、SmI_2による還元的環化を用いた方法でC/D環部を形成するルートを見出した。現在、連続的環化反応の基質となる鍵中間体の合成を検討中である。なお、設備備品として購入した試料保管用フリーザーは合成中間体保存のため使用している。
|