研究概要 |
硫酸化チロシンを含むペプチド性貝毒:α-conotoxinの生物活性や硫酸化による立体構造への影響を調べる目的で,本ペプチドの合成研究を行った。 1.α-conotoxin PnIA/IBの合成 (1)4残基のCysにTrt基を保護基として採用し,Fmoc法でペプチド鎖を構築後,硫酸化チロシンに損傷を与えない酸脱保護系で保護基の除去と樹脂からのペプチドの遊離を行った。このペプチドを用いてランダムに2つのdisulfide結合を形成させる方法を検討したところ,酸化剤として加えるDMSOの濃度によりdisulfide isomerの生成が大きく影響を受けることを認めた。そこでDMSOを50%添加することで目的のペプチドを高収率で得ることに成功した。 (2)Cysの保護基としてTrt基とAcm基の2種を用い,ペプチド鎖構築後に2段階で2つのdisulfide結合を形成させる合成経路を確立し,disulfide isomerを副生することなく目的のペプチドを得た。 2.α-conotoxin EpIの合成 (1)C末端Cys残基のSH基に2-クロロトリチル樹脂を結合させ,Fmoc法でペプチド鎖を構築後,2段階で2つのdisulfide結合を形成させる経路を検討した。Cysへのリンカー樹脂の導入およびペプチドを樹脂から遊離させる酸処理の方法に改良の余地があるが,目的とするEpIに導くことができた。 (2)液相法で合成した硫酸化チロシンを含むC末端トリペプチドをAspのβ-カルボキシル基を介して2-クロロトリチル樹脂に結合させ,固相合成後2段階で2つのdisulfide結合を形成させる経路を検討中である。 (3)1っのdisulfide結合を含むチオエステルセグメントを合成し,これと硫酸化チロシンを含むC末端トリペプチドを縮合させた後にI_2酸化により2つ目のdisulfide結合を形成させる方法論をEpIの合成に適用した。本アプローチはヒルジン全合成を行うにあたってのモデル実験となる。
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