1.Asp側鎖カルボキシル基を活用する新規固相合成法の開発と硫酸化α-conotoxinの合成への応用.α-conotoxin PnIA/PnIBの固相合成に引き続き、本年度はα-conotoxin EpIの合成を新しい方法論を取り入れて検討した。本ペプチドのC端部に存在するAsp残基に着目し、Aspのβ-カルボキシル基の活用を考えて、新たにFmoc-Asp(Clt resin)-OHを調製した。この樹脂に液相法で合成した硫酸化チロシンを含むジペプチドアミドを縮合させたのち、Fmoc固相法によりペプチド鎖を構築した。次いで2段階の選択的なジスルフィド形成反応を行って目的ペプチドに導いた。このアプローチでは、ジペプチドアミド中のCys保護基を選択することで2つのジスルフィド結合を順序を変えて形成することができ、その効率を比較することができた。さらに、本アプローチは固相樹脂上での硫酸化という新しい方法論にも展開できることから、今後検討していく予定である。 2.合成硫酸化ペプチドを用いた生体反応の解析. (1)化学合成した種々の分子サイズのラット・コレシストキニン(CCK)ペプチドを用いて、ラットにおけるCCK前駆体からのCCKペプチドの生合成とプロセッシングに関する研究を行った。(2)血小板中のglycoprotein Ibαには硫酸化チロシンを含むアニオン性のクラスターが存在し、von Willebrand factorやトロンビンとの結合に関与していることが示唆されている。そこで、3残基の硫酸化チロシンを含む22残基のクラスター部分の化学合成を行い、本タンパク質における硫酸化チロシンの機能解析を行っている。 3.質量分析を駆使した硫酸化部位の同定に関する研究. 硫酸化を受けたチロシンはキモトリプシンによる加水分解に抵抗性を示すことに着目し、酵素消化と質量分析を組合わせることにより、ペプチド・タンパク質中のどのチロシン残基が硫酸化を受けているかを同定する方法を検討している。
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