研究概要 |
本研究はこれまで全く報告のない光学活性有機アンチモン(Sb)化合物の合成法の確立とその不斉誘導反応における不斉誘導配位子としての活用を目的に行われたものである。 1.軸不斉を持つ光学活性有機Sb化合物の合成とその不斉配位子能:軸不斉を持つSb-Sb系BINASb(1)、Sb-P系BINAPSb(2)およびSb-N系光学活性配位子MASb(3)を合成し、これらを不斉誘導素子として利用した遷移金属触媒下の不斉誘導反応((1)非対称ケトン類の不斉還元、(2)アリルアセテート類の不斉アルキル化、(3)スチレン類の不斉ヒドロシリル化)を試みた。その結果、1は反応(2)で、2は反応(3)で優れた不斉誘導能を示すことを見出した。なお、(3)の反応で3を利用すると良い結果が得らるのは、配位子3が反応の初期には二座配位子として、後期では単座配位子として機能するためと考えられた。また、MASb(3)は反応(2)で中程度の不斉誘導能を示すことが判明した。 2.C-,Sb-中心性不斉ならびに面不斉を持つ光学活性Sb化合物の合成とその不斉配位子能:(1)ベンジルアミン官能基を持つ光学活性配位子C(S)-AMSb(4)、Sb(R/S)-AMSb(5)、[Ar(1R,2R),C(S)]-AMSb-Cr(6)、[C(S),Sb(R/S)]-AMSb(7)を合成し、これらを利用した不斉誘導反応を試みた。しかし、これらの光学活性配位子はいずれの反応でも低い不斉誘導能を示すに過ぎなかった。そこで、オキサゾリン官能基を持つC-中心性(8)およびC,Sb-中心性(9)を持つ光学活性スチバノオキサゾリン類を合成し、その不斉誘導能を調べた。その結果、これらは反応(2)で良い結果を与えること、この際、C上の不斉のみならず、Sb上の不斉も不斉誘起能に深く関与していることを明らかにすることができた。
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