研究概要 |
α-置換-α-アルコシキジアゾケトン類のロジウム(II)触媒C-H挿入反応では2,5-二置換-2-ジヒドロフラノン類が得られることが報告されているが、その収率ならびに立体選択性は満足の行くものではなかった。我々は、α-位に立体的にかさ高い置換基があれば立体選択性の増大が期待できると考え、α-位にイソプロピル基を持つα-アルコシキジアゾケトン類(3-ベンジルオキシ-及びブトキシ-1-ジアゾ-4-メチルペンタン-2-オン)と種々のロジウム触媒との反応を検討した。その結果、ベンゼン中オクタン酸ロジウム(II)と加熱還流すると高収率、高立体選択的にC-H挿入反応が進行し、2,5-cis-2-イソプロピル-5-フェニル(及びプロピル)ジヒドロフラン-3-オンが得られることを見いだした。 本反応を光学活性α-置換-α-アルコシキジアゾケトンの反応に応用した。L-バリンより容易に合成できる(S)-2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチルと臭化ベンジルを用いて光学活性(S)-3-ベンジルオキシ-1-ジアゾ-4-メチルペンタン-2-オンを合成し、ベンゼン中触媒量(1mol%)のオクタン酸ロジウム(II)と加熱還流すると、75%の収率で(2S,5S)-2-イソプロピル-5-フェニルジヒドロフラン-3-オンが単一の異性体として得られた。これをBaeyer-Villiger反応にふすと、(2R,3S)-2-イソプロピル-6-フェニル-1,3-ジオキサン-4-オンが高収率で得られた。これは保護されたβ-_ヒドロキシ酸と見ることができ、有機合成化学上価値ある合成中間体である。この一連の反応は、第一級ハロゲン化アルキルから二炭素増炭したβ-ヒドロキシ酸の不斉合成を意味しており、新規なβ-ヒドロキシ酸の不斉合成法を提供することが出来た。
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