研究概要 |
平成13年度は,ヒト由来肝細胞(HepG2)を用いた肝障害モデルの構築を試みた.まず細胞銀行より入手したHepG2を培養後,Alamar blueを用いて生細胞数をカウントすることで定量を試み,良好な検量線が得られることを確認した.次に種々肝障害誘導物質添加後のHepG2に対する肝毒性の検討を行った.肝障害誘導物質として,Bromobenzene, tert-Butyl hydroperoxideなどを比較検討した結果,tert-Butyl hydroperoxideが適度の肝障害を引き起こすことが明らかとなった.さらにHepG2細胞数とtert-Butyl hydroperoxide濃度の組合せ検討した結果,至適細胞数は3×10^4個で,tert-Butyl hydroperoxideは1.25mMの条件が最も良いことを見出した. 次に被験物質の測定を行った.被験物質の肝保護作用率はHepG2単独の細胞数をreference,肝障害誘導物質添加後の細胞数をcontrolで表し,さらにsample添加後の細胞数から,(sample-control)/(refrence-control)×100で算出した.まず対照薬物として肝炎治療薬のグリチルリチンの測定を行い,良好な結果を得,本試験法が最終的にヒトでの臨床応用も可能であることを確認した.次に多数のマメ科植物より得たサポニン類の肝保護作用を測定した.その結果,ラットモデルでは活性を示さなかったsoyasapogenol B, sophoradiolが活性を示し,特に前者が最も強い活性を示した.しかし,モノグルクロナイドの中には高濃度で毒性を発現するものもあることが判明した.これはグルクロニル基が肝細胞膜に対する親和性を上昇させ,結果として細胞膜に傷害を与えたことに起因するものと推定された.また,ラットモデルにおいて強い活性を有するsoyasapogenol Aはヒトモデルで活性を示さず,ラットモデルとは相反する結果となった.Sophoradiol型サポニンを主成分とする,生薬・葛花,鶏骨草は古来,肝臓疾患に用いられてきたが,腸内紳菌により代謝され生成するsophoradiolがHepG2モデルにおいて肝炎治療薬・グリチルリチンと同程度の活性を示したことは極めて有意義な知見と考えられる.
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