研究概要 |
動物個体の血圧は、生体の恒常性維持機能により一定の範囲に保たれている。血圧は、交感神経系、血管内皮、腎臓などから分泌される様々な生体分子により調節されている。本研究では、血圧調節に関わるこれら微量生体分子、特に内因性NO合成酵素阻害物質(N-メチルアルギニン、N,N-ジメチルアルギニンなど)を高感度に捉える分析法を開発することを目的とした。 これまでにも内因性NO合成酵素阻害物質の定量法は報告されている。最も繁用されている方法は、生体試料をイオン交換カラムで前処理した後、用手法によりオルトフタルアルデヒド(OPA)と反応させ、蛍光誘導体とし、イオンHPLCで分離し蛍光検出する方法である。しかし、この方法は前処理が煩雑で再現性が悪く、分離が不十分であり、またピーク幅が広くなるため感度が低下するなどの欠点があった。 そこで、平成14年度は、生体試料の前処理を組み込んだ自動分析計の開発を試みた。すなわち、生体試料をHPLCに直接注入し、陽イオン交換カラムで内因性NO合成酵素阻害物質をin-line抽出した。その後、カラムスウィチングを行い、これを逆相カラムで分離しOPAで蛍光誘導体化し蛍光検出した。この方法により生体試料の前処理を行う必要がなくなり、簡便、高感度、かつ再現性の高い分析が可能となった。以上のように、本研究により、これまでに報告されている内因性NO合成酵素阻害物質測定法と比べ、優れた分析法を開発することができた。今後、この分析計を用い、病態動物と正常動物を比較し、血圧の恒常性維持機能の解析を行う予定である。
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