研究概要 |
現在、医薬品開発研究において、医薬品の吸収予測が極めて重要な課題となっており、医薬品の化学構造と吸収特性との相関関係を整理することが必要とされている。本研究では、遺伝的アルゴリズムを構造活性相関研究の分野に導入し、遺伝的アルゴリズムと部分最小二乗法を組み合わせたプログラムを開発した。昨年度は、薬物の消化管吸収を支配する重要な因子の一つである水への溶解度に着目し、その予測モデルの構築を試み、約300化合物の溶解度のデータから精度の高い溶解度予測モデルを開発した。本年度は、消化管上皮細胞のモデルとして汎用されるCaco-2細胞層を用いて、薬物の膜透過に関わる予測モデルの構築を行った。なお、本解析では、基本的には受動拡散によって膜透過すると考えられている73種類の薬物(110個の透過性データ)を対象とした。まず、溶解度の解析の場合と同様、Molconn-Z【O!R】パラメータを用いてGA-PLS法により解析した。最終的には、24個の有意な分子記述子が選択され、そのときの予測相関係数q2は0.681±0.018(mean±SD,n=15)で、予測のRMS(root mean square)誤差は0.474±0.013であった。以上、消化管吸収を支配する溶解および膜透過に関するモデルが構築でき、医薬品分子設計のための基礎情報を得ることに成功した。
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