研究概要 |
今年度は、本研究を進めていくなかで見出された「大腸菌の外膜透過性を増大する生理活性ポリアミン」の作用を電気化学センサーであるイオンセンサーによる検討を含めて詳細に解析した。私達が見出した外膜透過性を増大するポリアミンは、ナフチルアセチルスペルミン(クモ毒)及びメトクトラミン(ムスカリンレセプターに対するアンタゴニスト)である。外膜はリポ多糖で覆われておりカルシウムイオンなどの二価金属イオンで安定化されている。ポリアミンを大腸菌懸濁液に添加するとカルシウムイオンの遊離が起こり、またテトラフェニルホスホニウムイオンの取り込みが引き起こされた。テトラフェニルホスホニウムイオンは、外膜透過性が増大すると細胞質膜電位の影響を受け、取り込みが促進されることから外膜透過性増大の指標として用いることができる。私達は、ナフチルアセチルスペルミン及びメトクトラミンの外膜透過性増大の作用機構として、カルシウムイオンと置換したポリアミンがリポ多糖間の相互作用を不安定化させ、その結果、リポ多糖の遊離が引き起こされると推測した。この可能性を確めるために、リポ多糖の遊離を測定した。その結果、テトラフェニルホスホニウムイオンの取り込みとほぼ近い濃度域でリポ多糖の遊離が観察された。したがって、これらのポリアミンの作用機序として、リポ多糖間の二価金属イオン結合部分に、より大きな分子が置き換わることにより外膜構造が不安定化され、リポ多糖の遊離が引き起こされ、透過性が増大したと結論された。 その他、生体アミンであるセロトニンを認識するセンサーをリン酸チオエステルを膜溶媒として作製した。リン酸チオエステルのなかでS, S, S-トリス(2-エチルヘキシル)ホスホロトリチオエートは、これまで開発されたセロトニン電極のなかで、生理食塩水中で最高の検出感度を示した。
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