研究概要 |
前年度までの研究において,蛍光性アリールボロン酸である4-(4,5-diphenyl-1H-imidazol-2yl)phenylboronic acid(DPA)がアリールハライドとSuzuki coupling反応により効率的に反応し,蛍光標識体を与えることが確認された。本年度は具体的なアリールハライド型医薬品を対象として,蛍光標識反応の最適化を図り,本標識法の血液等の生体試料分析への適用性を評価した。 1.アリールハライド型医薬品であるクロフィブラート(高脂血症薬)を対象に蛍光標識反応の最適化を行った。その結果,反応溶媒にジメチルホルムアミドを用い,100℃,45分間の反応で効率的な標識が可能となった。蛍光標識クロフィブラートの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分離後の検出下限は,120fmol/注入量と高感度であった。 2.生体試料への適用例として,ヒト血漿中クロフィブラートのHPLC-蛍光定量法を検討した。クロフィブラートを添加した血漿(50μL)を用いて,前処理法の検討を行った。その結果,酢酸エチルで液-液抽出を行うことで効率的な抽出が可能となった。クロフィブラート添加血漿の検量線は1〜400nmol/mLの範囲で良好な直線性(r=0.998)を示し,280fmol/注入量(170pmol/mL, S/N=3)の検出が可能であった。 以上の検討により,DPAによる蛍光誘導体化法が生体試料中クロフィブラートの高感度分析に適用可能であることが示された。DPAによる本標識法は高感度であり,他に有効な標識可能部位を持たないアリールハライド型医薬品の定量に有用である。また,生体試料中にアリールハライド型化合物は極めて少ないことから,種々のアリールハライド型医薬品の選択的定量が可能になるものと考える。
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