研究概要 |
蛍光性アリールボロン酸である4-(4,5-diphenyl-1H-imidazol-2yl)phenylboronic acid(DPA)とアリールハライドとのSuzuki coupling反応に基づく新規蛍光標識法を確立した。まず,ブロモベンゼン類を試料に用い,本標識反応の有用性に関して分析化学的観点からの評価を行った。次いで生体試料分析への適用性を評価する目的で,ヒト血漿中アリールハライド型医薬品の高感度HPLC-蛍光定量法を検討し,以下の結果を得た。 1.ブロモベンゼン類を試料に用い,基礎的な蛍光標識反応の確立を行った。その結果,各標識体をHPLC分離後,0.2〜1.4pmol/注入量の検出下限で検出できることが明らかとなった。また,DPAの反応性に与えるアリールハライドのハロゲンの種類及び置換基の位置等の影響に関する基礎的知見を得ることができた。 2.本標識反応の生体試料への適用例として,ヒト血漿中クロフィブラートのHPLC-蛍光定量法を検討した。クロフィブラートを添加した血漿(50μL)を用いて,前処理法の検討を行った。その結果,酢酸エチルで液-液抽出を行うことで効率的な抽出が可能となった。クロフィブラート添加血漿の検量線は1〜400nmol/mLの範囲で良好な直線性(r=0.998)を示し,280fmol/注入量(170pmol/mL,S/N=3)の検出が可能となった。 以上の検討により,DPAによる蛍光誘導体化法がアリールハライドに適用可能であり,かつ生体試料の高感度分析にも有用であることが示された。DPAによる本標識法は高感度であり,他に有効な標識可能部位を持たないアリールハライド型医薬品の定量に有用である。また,生体試料中にアリールハライド型化合物は極めて少ないことから,本標識法は種々のアリールハライド型医薬品の選択的定量法となることが期待される。
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