研究概要 |
実績計画(1),(2)に基づき研究を行い新知見を得ることができた. (1)担癌ラットへの^<15>N-ポリアミンの経口投与:^<15>N-標識プトレシン,スペルミジン,スペルミン(^<15>N-Put,Spd,Spm)の同量を同時に経口投与し3時間後にラットの各組織を採取して,既報のIS-MS法で分析した.その結果,小腸には三者ともにほぼ同レベルで検出され,ポリアミンの吸収が受動拡散機構であるという説を支持した.肝では^<15>N-Putはごく僅かで^<15>N-Spd,^<15>N-Spmは比較的多く,^<15>N-Spdの方が^<15>N-Spmよりかなり多く検出された.肝に比べて癌では,^<15>N-Putは多かったが^<15>N-Spd,^<15>N-Spmは少なく,^<15>N-Spd,^<15>N-Spmの大小関係は同じだった.腎では^<15>N-Putは肝と同様にごく僅かだったが,肝とは逆に^<15>N-Spmが^<15>N-Spdよりかなり多く検出された.これらの事実から吸収された三種ポリアミンの体内挙動について興味ある知見を得ることができた.すなわち,Putは血中や組織中に存在するジアミン酸化酵素により活発に分解されていると思われること,また,通常の組織ではSpdとSpmが能動輸送系で競合しSpdのほうが取り込まれやすく,取り込まれなかった余剰のSpmは排泄臓器である腎に貯留されると考えられた.一方,^<15>N-Spmの単独投与実験も同時に行い,約10%の割合で^<15>N-Spmを異常に多く取り込むラットが見いだされた.その理由の解明は重要であり今後の研究に待たねばならない. (2)ラットスペルミジン合成酵素の三次元構造:ラット酵素のジスルフィド結合システイン残基を特定する研究と並行して,本研究の目指す新しい阻害剤の開発研究も行った.従来知られてきた最も強い阻害剤,トランス-4-メチルシクロヘキシルアミン(4MCHA)に類似した4,4-ジメチルシクロヘキシルアミンに阻害作用が全くなかったことから,4MCHAに次ぐ阻害力を持つn-ブチルアミンに着目した.好熱性菌の三次元構造モデルに基づき作成した推定活性部位構造を参考にして,n-ブチルアミンの類似化合物をデザインした.その結果,4MCHAに匹敵する強い阻害剤として末端に二重結合を持つ5-アミノ-1-ペンテンを見いだした.
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