研究概要 |
(1)スペルミジン合成酵素阻害剤のラットへの長期投与:精製酵素を使った試験管内実験で最も強い阻害効果を示した4MCHAとAPEについて、ラットに経口投与し組織内ポリアミン濃度への影響を調べたところ、4MCHAは明瞭な阻害効果を示したのに対し、APEはほとんど効果を示さなかった。したがって以後の実験は4MCHAを使って進めることにした。投与方法は毎日1回経口投与で行い、投与量は体重の増加率と各組織中ポリアミン濃度の変動を指標にして決めた。投与量を変えた7日間の結果から、体重の増加率にほとんど影響がなくポリアミン濃度に明らかな変動が見られる投与量として、30μmolを選び4週間の長期投与を行った。その結果、スペルミジンは減少し続け、スペルミンは増加傾向を示したがスペルミジンの減少を補うほどではなく、両ポリアミンの和は減少した。本研究はin vivoでのスペルミジン合成酵素阻害剤の効果をはじめて詳細に検討したものであり、人為的にスペルミン/スペルミジン比を高めることにより、毒性をそれほど示さずに細胞の増殖速度を低下することができるかもしれないことを示唆した。 (2)ラットスペルミジン合成酵素の三次元構造:酵素に含まれる10個のシステイン残基について、それらがSSかSHかを調べた。その結果、C25がSSで、C71,C123,C204,C205,C209,C224がSHであることがわかった。残りのC89,C236,C251については決められなかったが、T.maritima酵素の三次元構造に基づくホモロジーモデリングの結果から、いずれもSHである可能性が大きいことがわかった。以上の結果から、C25の相手になるシステイン残基は同一プロトマー中にはないことになり、二量体のC25同士でSS結合している可能性が考えられた。
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