研究概要 |
プラスチック原料に含まれる内分泌撹乱物質であるビスフェノールA及びアルキルフェノール類(特にノニルフェノール類)の血中及び精液中の濃度を測定することは、前出の内分泌撹乱物質の人体への影響を調べる上で重要な意味を持つ。この目的のために、近年、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を上回る高分解能を持ち注目されている、キャピラリー電気泳動(CE)による高感度一斉分析法の開発を行った。ビスフェノールA及びアルキルフェノール類はミセル導電クロマトグラフィー(MEKC)により分離を行い、50×50μmキャピラリーに泳動液として20mMホウ酸塩緩衝液(pH8.0)に5mMγ-シクロデキストリン及び20mMドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を用いた。この方法により各フェノール類を100μL血清を用いて0.6-2000μg/mLの範囲で測定できた(検出波長214nm)。さらに血清を2.0mL使うことにより1.0ngまで検出が可能であった。10μg/mL試料における変動係数は6.3-7.7%、血清試料からの添加回収率は91.8-93.0%であった。このCE分析法についてはBiomedical Chromatography,15(7),437-442に掲載された。 現在このCE分析法と蛍光HPLC法を用いて、上記の内分泌撹乱物質による精子の減少、奇形及び男性不妊との影響を調査している。検体として、不妊相談に来院した男性の精液及び血液中の濃度を測定し、精液量、精子数、奇形率および他の疾病との影響について調べている。
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