研究概要 |
二本鎖カチオン性界面活性剤を構成成分とするカチオン性リポソームと多数の負電荷成分を有する皮膚角質層との相互作用を利用して、角質層脂質ラメラが障害された皮膚に対してセラミドや種々の脂質成分をリポソームによって補給すること、さらには脂質修飾によって薬物の経皮吸収速度を制御する新しい経皮吸収製剤の開発を目途として平成14年度は以下の研究を行った。二本鎖カチオン性界面活性剤ジメチルジアルキルアンモニウムの経皮吸収促進作用をサリチル酸イオンの透過性を指標として観察したところ、ジメチルジアルキルアンモニウムは、陰イオンであるサリチル酸イオンの皮膚内濃度を増大することによって吸収を顕著に促進することがわかった。一方、セラミドと二本鎖カチオン性界面活性剤によるカチオン性リポソームの形成をオレイン酸をアシル鎖とする二本鎖カチオン性界面活性剤、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)を用いて検討した。その結果、セラミドとの濃度比が1:2まではリポソームを形成することがわかった。また、セラミド含量が高くなるほどリポソーム膜が硬くなることがわかった。コレステロールの添加は膜をさらに硬くするとともに、リポソームを安定化することがわかった。そこで、次にこのようなカチオン性リポソームと生体膜との相互作用を利用して、皮膚のバリアー能を担う角質層脂質の不足した皮膚への脂質補給への応用を試みた。80%エタノール処理によって角質層脂質ラメラが障害されたモルモット背部摘出皮膚に対するサリチル酸イオンの透過性に対する影響を観察したところ、セラミド、ジメチルジパルミチルアンモニウム、コレステロール(モル比2:1:2)よりなるリポソームの添加により透過性の低下が観察され、角質層脂質のバリアー能の回復が推察された。
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