研究概要 |
二本鎖カチオン性界面活性剤を構成成分とするカチオン性リポソームと多数の負電荷成分を有する皮膚角質層との相互作用を利用して、脂質類似成分をリポソームによっ、て効率的に補給することを目途として平成15年度は以下の研究を行った。二本鎖カチオン性界面活性剤としてジメチルジパルミチルアンモニウムあるいは1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)を構成成分として有するカチオン性リポソームを用いてレチノイン酸の皮膚移行性を改善することを試みた。カチオン性リポソームを安定化するための補助脂質として卵黄ホスファチジルコリンを用い、レチノイン酸を脂質膜成分として取り込んだリポソームを超音波法によって調製した。モルモット背部摘出皮膚へのレチノイン酸の移行量を観察したところ、レチノイン酸を溶液として添加した場合に比べて二本鎖カチオン性界面活性剤、卵黄ホスファチジルコリン、レチノイン酸のモル比が2:2:1の系で顕著な皮膚移行量の増大が観察された。二本鎖カチオン性界面活性剤の構成比を減少すると皮膚移行量は顕著に減少した。また、主として不飽和脂肪酸をアシル鎖とする卵黄ホスファチジルコリンの代わりに飽和脂肪酸をアシル鎖とするジミリストイルホスファチジルコリンを用いてリポソームを調製した場合にも、レチノイン酸の皮膚移行量は顕著に減少した。リポソーム内に内包した薬物の経皮吸収に有用であるとされる変形性リポソームはレチノイン酸の皮膚移行量については、有意な効果が観察されなかった。以上の結果より、レチノイン酸の皮膚移行を効率的に行うためにカチオン性リポソームが有用であることがわかった。また、皮膚角質層脂質成分とリポソームとの相互作用を行わせ、レチノイン酸の皮膚移行を増加させるために流動性に富む脂質成分の存在が重要であることが示唆された。
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