研究概要 |
1 ピラゾールおよび4-メチルピラゾールを架橋配位子とする二核白金錯体を申請者の開発した新規合成法により合成した。 2 新規白金錯体のキャラクタリゼーションは,核磁気共鳴(1H-,195Pt-NMR)法,質量スペクトル法(それぞれ大阪薬科大学現有設備)および元素分析法などにより行った。 3 本複核錯体は核酸に強く配位結合する前に、,弱い相互作用を行うことを新たに見い出した。この弱い相互作用は、融解温度および粘度の測定、発蛍光インターカレーターを用いる蛍光分光法などにより検討した結果、静電的相互作用であると推定した。 4 本複核錯体の酸性下および塩化ナトリウム溶液中での挙動を、HPLC法および1H-NMR法により経時的に測定し、速度論的に解析した。その結果、ヒドロキソ架橋はプロトンの攻撃を受けアコ体へ変化するが、塩化ナトリウムが存在すると置換反応が生じ、ジクロロ体に可逆的に変換されることを見いだした。その際、ピラゾラート架橋は解裂せず、複核構造が保たれていることを1H-NMR法により確認した。 5 シスプラチン耐性がん細胞に及ぼす白金錯体の影響をセルアナライザー(フルオロサイトメトリー)法により検討し,新規白金錯体はシスプラチンより強いアポトーシス誘導能を有することを認めた。 6 グアニン塩基関連化合物と複核白金錯体との相互作用については、主としてNMR法により解析した。なお、研究代表者は、ライデン大学より同大学の博士論文審査員として招聘され、'2002年5月にライデンに出張した。その際、研究分担者と本研究に関する互いの成果を交換し、内容について討論した。 7 以上を総合して、新規複核白金錯体の核酸との反応における特異性を単核白金錯体シスプラチンのそれと比較しつつ、シスプラチン耐性がん細胞増殖抑制に有効な白金錯体の分子設計について考察を加えた。
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