未知オーファン蛋白質の探索と精密構造解析に関する研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13672266
• 研究機関: 近畿大学
• 研究代表者: 池川 繁男 近畿大学, 薬学部, 教授 (90111301)
• キーワード: オーファン蛋白質 / リトコール酸 / イブプロフェン / 抗体 / アシルアデニレート / ELISA / 胆汁酸

研究概要

未知オーファン蛋白質を探索する上で、ミクロケミカルなアミノ基へのプローブの導入法と、このプローブに対する抗体を用いる活性中心固定化型オーファン蛋白質の高性能・分離精製法が必須となる。そこで、カルボン酸のアシルアデニレートとペプチドや蛋白質のアミノ基との反応性に着目し、以下の検討を行った。まず、内因性生理活性物質として胆汁酸を取り上げ、アデノシン-5'-モノホスフェートとの混合酸無水物であるアシルアデニレート5種をアフィニティーラベルとして合成するととともに、光学的性質に検討を加え、HPLCによる検出感度500fmolという高感度一斉分析法を構築した。ついで、本法をラット肝細胞内オルガネラのオーファン蛋白質の追跡に適用し、ミクロソーム画分に高い親和性を持つ酵素蛋白質が存在することを実証した。引き続き、大腸癌との関連から注目される二次胆汁酸のリトコール酸、薬物としてα-アリールプロピオン酸系抗炎症薬イブプロフェンを取り上げ、抗ハプテン抗体の特異性が感作抗原であるハプテンーキャリヤー蛋白より離れた位置をよく認識するというこれまでの知見を基に、これら低分子生理活性物質が機能を発現する上に必須となる部分構造より離れた位置を介してウシ血清アルブミンと結合させ、これらを感作抗原として抗体を調製し、アルカリホスファターゼ標識抗原を用いるELISAにて交差反応性を調べた。その結果、いずれの抗体も期待通り、活性中心に固定されたプローブに高い親和性を有することが明らかとなった。これらの研究成果は、今後オーファン蛋白質の探索と高性能分離のみならず、精密構造の解析、さらには免疫組織化学的手法による細胞内局在部位の解明など、多岐にわたって大きく役立つことが期待される。

研究成果

• [文献書誌] Shigeo Ikegawa: "Production and characterization of monoclonal antibodies recognizing the asymmetric center of optically active bufuralol and its metabolites"Anal. Sci.. 16. 31-35 (2000)
• [文献書誌] Junichi Goto: "Bile acid acyl adenylate : a possible intermediate to produce a protein-bound bile acid"Rapid Commun. Mass Spectrom.. 15. 104-109 (2001)
• [文献書誌] Sheigeo Ikegawa: "The enantioselective immunoafinity extraction of an optically active ibuprofen-modified peptide fragment"Anal. Biochem.. 296. 63-72 (2001)
• [文献書誌] Nariyasu mano: "Simultaneous detection of cholyl adenylate and coenzyme A thioester utilizing liquid chromatography/electrospray ionization mass spectrometry"Anal. Sci.. 17. 1037-1042 (2001)
• [文献書誌] Takashi Iida: "Complete ^1H and ^<13>C resonance assignments of glucidic conjugates of nonamidate and amidated bile acids"Magn. Reson. Chem.. 39. 749-756 (2001)
• [文献書誌] Takashi Iida: "Potential bile acid metabolites. 24. An efficient synthesis of carboxyl-linked glucosides and their chemical properties"Lipids. 37. 101-110 (2002)