研究概要 |
ニワトリ卵白中に含まれる糖タンパク質であるα_1-酸性糖タンパク質(α_1-AGP)のS-S結合および糖鎖結合位置をMALDI-TOFMSにより明らかにした。 1.α_1-AGPにEndo F/PNGase Fを作用させ、糖鎖を完全に水解したα_1-AGP(cd-α_1-AGP)を調製した。 2.cd-α_1-AGPを2M ureaを含む100mM NH_4HCO_3緩衝液に溶解し変性後、トリプシン消化を行なった。得られたトリプシン消化物の分子量をMALDI-TOFMSを用いて測定し、S-S結合の位置を決定した。 3.cd-α_1-AGPを100mM NH_4HCO_3緩衝液に溶解し、10mM DTTおよび10mM CH_2ICONH_2で還元アルキル化後、トリプシン消化を行なったのち、MALDI-TOFMSおよびシークエンサーを用いて糖鎖結合位置を決定した。 4.α_1-AGPが2個のS-S結合を有し、183残基のアミノ酸からなることを明らかにしている。cd-α1-AGPの変性後のトリプシン消化物において、3036.3(ペプチド69-76,161-183)および3452.3(ペプチド69-80,161-183)の[M+H]^+イオンが検出されたことより、S-S結合の位置はCys6とCys146およびCys73とCys163であることがわかった。また、N-アセチルグルコサミンが付加したペプチド、AsnがAspに変換されたペプチドに由来するイオンが検出されたことから、糖鎖の結合位置はAsn16,62,70,77,87であることがわかった。また、62位の糖鎖が欠如したα_1-AGPも存在することがわかった。これらの結果より、ニワトリα_1-AGPはヒトα_1-AGP[181残基のアミノ酸、2個のS-S結合(Cys5とCys147およびCys72とCys164)および5個の糖鎖を有する]と構造的に類似していることを明らかにした。
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