研究概要 |
ニワトリ卵白中に含まれる糖タンパク質であるα_1-酸性糖タンパク質(α_1-AGP)が2本のS-S結合および5個所の糖鎖結合位置を有し、183個のアミノ酸残基から構成されていることを明らかにした。今回、α_1-AGPのTrp26位を特異的に修飾したTrp-modified α_1-AGPを調製し、α_1-AGPの光学認識機構について検討した。 1.Trp-modified α_1-AGPの調製:α_1-AGPの20%酢酸溶液中に、o-nitrophenylsulfenyl chlorideを加え、0℃で5時間反応した。水で透析後、凍結乾燥し、Trp-modified α_1-AGPを得た。 2.固定化カラムの調製と光学認識能の検討:α_1-AGPおよびTrp-modified α_1-AGPを、N,N'-di-succinimidyl carbonateで活性化した細孔径120Åのaminopropyl-silicaゲルに固定化した。移動相として20mMリン酸塩緩衝液(pH5.1)/エタノール(90:10)を用い、種々の薬物の光学認識能を比較検討した。 3.α_1-AGPはTrp残基を26位にのみ持っている。そこで、o-nitrophenyl-sulfenyl chlorideを用いてTrp 26位を特異的に修飾したTrp-modified α_1-AGPを調製した。次に、α_1-AGPおよびTrp-modified α_1-AGP固定化カラムを調製し、種々の薬物の光学認識能を比較検討した。α_1-AGP固定化カラムと比較して、Trp-modified α_1-AGP固定化カラムにおいては、alprenolol,oxprenolol,pindolol,propranololなどのβ-遮断薬の保持の減少および光学分割能の消失がみられた。一方、Trp-modified α_1-AGP固定化カラムは、中性および酸性薬物のうち、benzoin,warfarin,flurbipro-fenおよびketoprofenに対する光学認識能を保持していた。これらの結果は、Trp 26近傍の光学認識サイトおよび他の光学認識サイトの存在を示唆していた。
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