研究概要 |
1.がん組織酸素分圧測定のためのプローブとしてリチウムフタロシアニン(LiPc)を検討した。LiPcは水に不溶性であり組織に移植しても炎症が見られないことから、がん組織に移植すれば組織内の酸素分圧プローブとして用いることができると考えられる。正常マウス大腿部皮下に移植したLiPcは300MHz電子スピン共鳴(ESR)を用いて測定した場合1mg以上で検出可能であった。LiPcのESRシグナルの線幅と酸素分圧の関係は酸素分圧が少なくとも0〜90mmHgの範囲で直線関係があった。また、LiPcを移植したマウス大腿部を虚血再灌流するとESRシグナルの線幅が0.025mTと0.012mTの間で可逆的に変化することが確認できた。 2.レドックスプローブとして用いるニトロキシルラジカルのL-バンドESRによるin vivo測定で検出感度を上げるために、スペクトル線の線幅を狭くすることを検討した。過重水素化した2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリドン-N-オキシルラジカル及び3-カルバモイル-2,2,5,5-テトラメチルピロリジン-N-オキシルラジカルを合成し、in vitroでシグナル強度を重水素化していないものと比較したところ、比較的低い変調幅では過重水素化することによりシグナル強度の顕著な増加が見られたものの、L-バンドESRで使用する変調幅である0.1〜0.2mTではシグナル強度は1.1〜1.3倍程度に増加したに過ぎなかった。
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