研究概要 |
p120 RasGAPは,低分子量Gタンパク質Rasに特異的に作用して,そのGTP加水分解活性を促進するタンパク質(GAP ; GTPase activating protein)である.これまでのin vitroの実験では,正常型RasのGTPase活性をおよそ1000倍上昇させ,またin vivoでは,GTP結合型RasをGDP結合型Rasに変換することによりRasを介するシグナルをオフにする"分子スイッチ"としての機能をもっている.RasGAPは,SH(Src homology)2,SH3,PH(Pleckstrin homology)等の細胞内シグナル伝達に関連する幾つかのドメイン構造やRasタンパク質に直接結合しそのGTPase活性の促進に関与するGRD(GAP-related domain)をもっており,これらの部分でRasタンパク質の局在や活性制御に密接に関わっていると考えられている.本研究の代表者は,RasGAPのシグナル伝達に関与すると考えられている幾つかのドメインに注目し,その構造と機能の関係を生化学的および構造生物学的アプローチにより解明することを目的とした研究を進めた.以下に,今年度得られた新たな知見等の成果を示す. 1.PCR法によりヒトp120RasGAP遺伝子のクローニングを行った. 2.得られた遺伝子をもとに,プロリンに富む領域,N末側およびC末側の2つのSH2ドメイン,ならびにSH3ドメインを適当な組合せで含む7種類のタンパク質を設計し,そのうち3種類の組換え型タンパク質を大腸菌のシステムにより,GSTあるいはヒスチジンタグとの融合タンパク質法で,大量発現させた.現在,高収率,高純度の精製方法の開発を行っている.
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