本研究では真皮マクロファージ様細胞の感作免疫に対する関与を、細胞の遊走開始、リンパ節の特定の領域への分布と定着、低分子抗原(ハプテン)の提示過程におけるマクロファージの相互作用、の3つの素過程に分割し、感作過程の理解を目指している。本研究では特に(1)リンパ節の特定の領域への分布と定着と、(2)低分子抗原(ハプテン)の提示過程におけるマクロファージの相互作用について解析した。 (1)リンパ節の特定の領域への分布と定着: 真皮マクロファージ様細胞のマーカーであるマクロファージレクチン(MGL)が機能的な認識分子として体内で細胞交通を規定する可能性を示した。皮膚からの細胞が最初に流入する部位はリンパ節の辺縁洞である。この部分に存在する辺縁洞マクロファージが組換え型MGLと高い親和性で結合することを見出した。リンパ節の可溶化物からMGLリガンド分子の同定を行ったところ、これがsialoadhesinであった。さらにMGLとsialoadhesinの結合にN結合型糖鎖が関与すること、細胞膜上に発現したMGLがsialoadhesinと結合することを示した。真皮マクロファージと辺縁洞マクロファージの相互作用の分子基盤の一つを明らかにした。 (2)低分子抗原の提示過程におけるマクロファージの相互作用: 抗原塗布後1日から3日にわたり、所属リンパ節では種々の炎症性サイトカイン、メディエーターの産生が亢進していることを示した。特にCOX-2依存性に産生されるプロスタグランジン類は皮膚からリンパ節に移動したマクロファージ依存的に産生されており、病態をTh2に傾斜させる因子のひとつとして興味が持たれた。COX-2の活性阻害剤の投与により抗原特異的な耳介の腫脹がともに5割ほど抑制された。炎症抑制を達成するための新しい剤として有用と考えられる。
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