1)カルシウム拮抗薬は血管平滑筋などのL型Ca^<2+>チャネルに結合し、Ca^<2+>チャネルを不活性化状態に移行させ開口確率を下げCa^<2+>チャネル機能を阻害することにより奏効する。一方、Ca^<2+>チャネルアゴニストはL型Ca^<2+>チャネルの開口確率を上昇し開口時間を延長するため、L型Ca^<2+>チャネルを開口させる薬理学的ツールとして実験に使用される。特にジヒドロピリジン(DHP)系カルシウム拮抗薬にはその立体異性体がCa^<2+>チャネルアゴニストになるものが知られている。そこで、我々はCa^<2+>チャネルの開閉機構およびその制御の分子機構を明らかにする目的で検討を行った。その結果、L型Ca^<2+>チャネルα_<1C>サブユニット(CaV1.2)IIIS5-S6間のチャネルポア領域にDHP系カルシウム拮抗薬およびCa^<2+>アゴニストの結合に重要な役割を果たす2つのアミノ酸を同定した。両アミノ酸を欠く改変Ca^<2+>チャネルはカルシウム拮抗薬・Ca^<2+>アゴニストの区別がつかなくなりいずれによっても遮断された。以上の結果を元に、α_<1C>サブユニットにおけるDHP結合モデルを提唱し、さらにCa^<2+>チャネルのゲーティング制御にポア領域が関与するという新たなモデルを提唱した。2)βアドレナリン受容体・PKA系を介したL型Ca^<2+>チャネルの機能制御にα_<1C>サブユニットの細胞内カルボキシル末端領域とβサブユニットが関与することを見出し、βサブユニットのfirst conserved regionとα_<1C>サブユニットカルボキシル末端領域の相互作用を介してCa^<2+>チャネルのゲーティング機構を制御しているというモデル仮設を提唱した。3)L型Ca^<2+>チャネルのα_<1C>サブユニット(Ca_V1.2)とα_<1D>サブユニット(Ca_V1.3)の活性化・不活性化の膜電位依存性が異なり、その差異が心臓洞房結節細胞のペースメーカー活動電位における各Ca^<2+>チャネルの機能的役割の違いに重要であることを示した。さらに、α_<1C>サブユニットとα_<1D>サブユニットのキメラチャネルの解析から両チャネルの膜電位依存性の差異をリピートIIが担うことを新たに見出した。
|