研究概要 |
1)ヒト電位依存性N型カルシウムチャネルCav2.2サブユニットを用いて,新規鎮痛薬ONO-2921のN型カルシウムチャネル抑制作用について,作用機序を検討した。その結果,ONO-2921は頻度依存的にN型チャネルを抑制すること,および不活性化状態のチャネルタンパク質に対して選択的に結合することが明らかになった。また,その作用強度がカルシウムチャネルβサブユニットによって変化することを見出した。2)ヒトR型カルシウムチャネルCav2.3サブユニットを分子クローニングし,哺乳類細胞に発現させた場合の電流応答を記録した。この実験系を用いてONO-2921の作用を検討したところ,ONO-2921はR型チャネル応答も頻度依存的かつ不活性化チャネル選択的に抑制することを見出した。3)カルシウムイオンを透過する新しい分子ファミリーであるTRPチャネルに着目し,ラット大脳皮質初代培養ニューロンに発現しているチャネル遺伝子およびタンパク質を検索したところ,TRPC3およびTRPM2がmRNA,タンパク質ともに強く発現していることを明らかにした。培養ニューロンにカルシウム蛍光指示薬を負荷して諸種細胞刺激が誘発する細胞内へのカルシウム流入を評価したところ,ATP受容体刺激,細胞内カルシウム枯渇,高カリウム刺激,過酸化水素適用によってカルシウム流入が起こることを見出した。アンチセンスDNAおよび小分子干渉RNAを用いたノックダウン実験から,TRPC3はこのうちATP受容体刺激によるカルシウム流入に関わっていること,また,TRPM2は過酸化水素刺激によるカルシウム流入に関わっていることを見出し,神経系における新たなカルシウム流入阻害薬の作用点として,これらのイオンチャネルが候補分子となりうることを明らかにした
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