血液系細胞は、胎児期にAGM領域にその源を発した造血系幹細胞前駆細胞由来であり、前駆細胞は胎児肝臓に移行し造血系幹細胞となり、次いで骨髄へ、一部は胸腺へ移行し血液系細胞に分化する。本研究では、胎児肝での血液系幹細胞と肝臓細胞の相互作用、胸腺での未熟T細胞と胸腺間質細胞との相互作用に関わる分子について検索し、以下のことを明らかにした。 1:平成14年度に作成した新規抗CD13抗体は、胸腺中の髄質上皮細胞に選択的に反応することを明らかにし、CD13は髄質上皮細胞の新しいマーカーであることを示した。 2:胸腺中のCD13発現は、IL-4によって増強されることが判った。 3:胸腺中のCD13陽性上皮細胞のIL-4による発現増強効果は、アミノペプチダーゼ阻害剤Ubenimexで消失することが判った。 4:樹立した胸腺上皮細胞株が増殖するためには、IL-4が増殖因子として働いている可能性を明らかにした。また胸腺上皮細胞は抗IL-4抗体の存在下で抑制されることが判った。 5:IL-4欠損マウスでは形態学的に正常な胸腺を示すことから、胸腺上皮細胞の増殖にはIL-4以外の増殖因子の存在が予想されるため、胎児期の正常マウスおよびIL-4欠損マウスから胸腺上皮細胞を得、遺伝子アレイ解析を行った。その結果、IL-4欠損マウスではIL-1βの発現が上昇しており、これが代償的に増殖因子として働いている可能性を明らかにした。 6:従来のモノクロナル抗体以外に、新しいモノクロナル抗体の作成を進め、胎児肝臓細胞共培養系でc-kit陽性細胞のみの増殖を強く阻止する新規モノクロナル抗体を得た。対応抗原分子の同定を進めている。
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