脳精巣に高発現する新規な抗原ペプチド輸送体ファミリーTAPL(Transporter associated with antigen processing-likeの略称)の機能を明らかにする目的で、以下の研究を行った。 l)脳・精巣由来培養細胞におけるTAPLの発現 昨年度明らかにした、精巣由来培養での細胞株に加え、脳由来培養細胞におけるTAPLの発現量を解析した。神経細胞へとNGFに分化させたPC12細胞、並びにグリオーマ由来C6細胞におけるTAPLの発現を解析したところ、PC12細胞への高発現を同定した。 更に精巣セルトリ細胞由来TM4細胞における転写制御領域をレポーターアッセイで解析したところ、FasLigandの制御領域と類似する配列が見出された。生殖細胞とその支持細胞であるセルトリ細胞との、細胞死を介した細胞数調節との関連が興味深い。 また、線虫におけるホモログについて、遺伝子発現の網羅的解析からそのひとつは神経に発現する可能性が指摘されていたが、これを蛋白レベルで解析するための抗体を作成した。この抗体をもちいたウエスタンブロット解析により予想分子量の蛋白が検出された。 2)TAPL発現細胞と輸送活性測定系の構築 昨年度に構築した、TAPLを安定高発現するハエ由来培養細胞S2細胞株におけるTAPLの細胞内発現部位を決定した。小胞体並びにリソソームにおける発現を明らかにした。更にこの細胞より調製した膜画分からのTAPL蛋白の可溶化条件、並びにATP結合活性の検出をみいだした。さらに基質依存のATPase活性をみるためのアッセイ法を習得したので、次年度の基質ペプチド依存の輸送活性を検討することが可能となった。
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