研究概要 |
脳・精巣で高発現する新規な抗原ペプチド輸送体ファミリーTAPL (transporter associated with antigen processing-like, ABCB9)の機能解析に向けで以下の研究を行った。 1)臓器別にみたアイソフォーム発現の特徴 ヒトとラットのTAPLで同定した最終エクソンのスプライシングアイソフォームについて、臓器別発現と加齢・性別による発現変動を解析した。アイソフォームごとに異なる発現パターンの有ることがわかった。更にグリア由来C6細胞において、真核生物ではめずらしい、主たる膜貫通領域を含まないATP結合領域だけをコードするmRNAの発現を検出した。 2)基質依存の2量体形成の解析 TAPL高発現細胞から調製した膜画分を用い、基質依存のATPase活性の測定を試みたが十分評価できる活性を検出できなかった。そこで、2量体であることに着目し、化学架橋実験で、基質依存にTAPL2量体の安定化を検出できるようにした。その結果、TAPと同じ基質ペプチドでTAPLの2量体形成は安定化した。一方、MDRのペプチド性基質、性ホルモン、アミロイド蛋白等では、TAPLの2量体形成は変化しなかった。 3)ATPase活性と構造変化 ABC領域への変異導入によりATPase活性を消失した変異体を作成した。この変異体蛋白では野生型TAPLと異なりATP結合能が失われ、基質ATP依存の構造変化(トリプシン感受性)も検出されなくなった。 4)薬物排出活動の検討 TAPLもMDRの様に薬物排出活性を示すかどうかを、酵母の薬物耐性による増殖活性で解析した。Nigericin存在下で培養すると、TAPL発現酵母は、非発現株のコントロールに比べて増殖が回復するのではなく、むしろ更に阻害された。MDRと異なり、TAPLは細胞内に入った薬物をそのまま細胞内にとどめる可能性が示唆された。
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