脳精巣に高発現する新規な抗原ペプチド輸送体ファミリーTAPL(Transporter associated with antigen processing-like)について以下の研究を行った。 1)TAPLのスプライシングアイソフォーム 臓器特異的発現解析の過程で、C末側の配列が異なるアイソフォームがヒトでは3種、ラットで4種見つかった。ゲノム構造との対応からこれらは最終エキソンの異なるスプライシングによる産物であった。新たに見出されたラットアイソフォームは脳と精巣で異なる発現を示した。またヒト抹消血リンパ球のアイソフォーム発現に個体差のあることを検出した。C末側の多様性は、基質の選択や輸送効率に影響する可能性がある。 2)脳・精巣由来培養細胞におけるTAPLの遺伝子発現 精巣由来培養細胞TM4セルトリ細胞とTMBライディッヒ細胞ではいずれもTAPLの発現がみられたが、TM4細胞でより高発現していた。脳由来培養細胞では、神経細胞へと分化させたPC12細胞、C6グリオーマ由来細胞では、PC12細胞への高発現を検出した。 TM4細胞における転写制御領域を解析した結果、FasLigandの制御領域と類似する領域が見出された。生殖細胞とその支持細胞であるセルトリ細胞との、細胞死を介した細胞数調節との関連が興味深い。 3)TAPL発現細胞株の樹立と基質依存の2量体形成 TAPLを安定高発現するハエ由来培養細胞S2細胞株におけるTAPLの細胞内発現部位は小胞体並びにリソソームであることを明らかにした。更にこの細胞の膜画分からTAPL蛋白の可溶化条件とATP結合性をみいだした。基質依存の2量体形成能を抗原ペプチド輸送体TAP1/2の例を参考に解析した結果、TAPの基質抗原ペプチドでTAPLの2量体形成が促進され、この系を用いた基質候補の検索が可能となった。
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