ヒト皮膚線維芽細胞における肝細胞増殖因子(HGF)産生はcAMP上昇薬や種々の増殖因子、プロテインキナーゼC活性化ホルボールエステルなどによって誘導される。インターロイキン1α(IL-1α)及びIL-1βは単独ではHGF産生に対してほとんど影響を及ぼさないが、8-bromo-cAMPやコレラトキシンによるHGF誘導のみならず、PMAによるHGF誘導も強く抑制した。このIL-1の抑制作用は1pg/mlより認められ100pg/mlで最大に達し、IL-1レセプターアンタゴニストによって減弱した。IL-1の最大抑制効果はHGF産生抑制薬として知られるデキサメタゾンよりは強く、TGF-βとほぼ同程度の強力なものであった。また、EGFによるHGF産生誘導も上記誘導剤によるHGF産生よりは弱いながらもIL-1により抑制された。IL-1はコレラトキシンによるHGF mRNAレベルの上昇も強く抑制したことから、IL-1のHGF誘導抑制作用はHGF遺伝子の転写レベルで発揮されることが示唆された。一方、Toll-like receptor(TLR)/IL-1レセプターファミリーに対するリガンドのリポポリサッカライド(LPS)やIL-18にはIL-1のような強い抑制作用は認められなかった。IL-1のシグナルは細胞内シグナル伝達経路を経て、転写因子AP-1及びNF-κBの活性化を引き起こすことが知られている。IL-1の抑制作用はNF-κB活性化阻害剤(lactacystin、MG-132)では影響を受けなかったが、MAPキナーゼ阻害剤(PD 98059)及びp38阻害剤(SB 203580)により一部解除された。このことから、IL-1の本作用にはMAPキナーゼカスケードの活性化が関与するものと考えられる。
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