ヒト真皮線維芽細胞における肝細胞増殖因子(HGF)産生は8-bromo-cAMPやコレラトキシン、プロスタグランジンE2などのcAMP上昇薬やプロテインキナーゼC活性化ホルボールェステル、種々の増殖因子により著しく誘導されるが、インターロイキン1α(IL-1α)及びIL-1βはいずれの誘導剤によるHGF誘導も強く抑制すること、IL-1の本作用には少なくとも部MAPキナーゼカスケードの活性化が関与することを前年度の研究で明らかにした。今年度の研究で以下の成果が得られた。ERK及びp38両MAPキナーゼの活性化(リン酸化)はIL-1βの添加後、15及び30分で起こり、その後はコントロールのレベルに戻った。HGF産生誘導を強く抑制することが知られているTGF-β1の作用も両MAPキナーゼ経路の阻害剤(PD98059及びSB203580)により部分的に解除されたが、デキサメタゾンによる抑制は両阻害剤により解除されなかった。IL-1の抑制作用はNF-kB活性化阻害剤のcaffeic acid phenylethyl esterやcapsaicinにより一部解除されたが、JNK阻害剤のSP600125による解除は弱かった。また、インターフェロンγによっても部分的に解除された。IL-1と共通した作用を示すことが多いtumor necrosis factor α(TNF-α)もIL-1と同程度のHGF産生誘導抑制効果を発揮し、IL-1と同様に、コレラトキシンによるHGF遺伝子発現の増加を抑制した。さらに、TNF-αの抑制作用もPD98059、SB203580及びインターフェロンγにより部分的に解除された。
|