研究概要 |
中枢におけるヒスタミンH1受容体の役割を明らかにする目的で,ヒスタミンに対する応答は正常であるが,脱感作(down-regulation)が完全に阻害される変異H1受容体を作製した.もし生体内の正常H1受容体が上記の変異H1受容体に入れ換わると,H1受容体脱感作がおこらないためにヒスタミンに対するH1受容体の反応が過剰に発現すると考えられる.そこでH1受容体の反応が過剰に現れるときに,中枢機能にどのような影響があるかを調べ,これにより中枢におけるH1受容体の機能を明らかにしようと考えた,このために,上記の改変H1受容体を正常H1受容体と置き換えた遺伝子改変マウスを作成しその行動を調べる実験を計画した.まずマウスH1受容体遺伝子のコード領域からPCR法により作製したDNAプローブをもとに,マウス(C57/BL6)ゲノムDNAのBACクローンをスクリーニングし,H1受容体遺伝子を含むクローンを単離した.このクローンからH1受容体遺伝子を含む約13kbの断片をpBluescriptベクターに導入し,さらにPCRミュータジェネシス法によりH1受容体遺伝子に目的の5ヵ所の変異を導入した.最後にポジティブ選別用遺伝子(PGKNeopA),ネガティブ選別用遺伝子(pMC1DT-ApA)をこのベクターの適切な位置に挿入しターゲティングベクターを作製した.このターゲティングベクターをマウスES細胞にエレクトロポレーション法により導入し,ES細胞のコロニーを単離した.現在,遺伝子の相同組換えが生じたクローンを同定中である.組換え体が得られれば,このES細胞をマウス胚に注入し遺伝子改変マウスを作製する予定である.この遺伝子改変マウスでは,H1受容体レベルが通常より上昇することから,中枢におけるH1受容体を介した反応が過剰になると考えられ,H1受容体の中枢での役割の解明に有用であると考えられる.
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