研究概要 |
平成13年度においては、ヒト血管内皮細胞に対するスフィンゴシン1リン酸の作用について検討し、以下の結果を得た。尚この成果はJournal of Physiology誌に公表した(Journal of Physiology,537-2,431-441,2001)。 単一ヒト臍帯静脈内皮細胞標本に電気生理学的手法と細胞内Ca濃度測定法を適用し、スフィンゴシン1リン酸の作用について検討した。スフィンゴシン1リン酸の投与により、濃度依存的に細胞内Ca濃度が上昇した。内皮細胞を百日咳毒素で処理すると、このスフィンゴシン1リン酸誘発性の細胞内Ca濃度上昇は消失した。電位固定下、スフィンゴシン1リン酸を投与すると、細胞内Ca濃度の上昇に先行し内向き電流が惹起された。逆転電位の測定から、この内向き電流は非選択性カチオンチャネル電流であることが判明した。また単一チャネル電流記録法により、スフィンゴシン1リン酸誘発性の非選択性カチオンチャネル電流を構成すると考えられる単一チャネル電流を記録し、そのコンダクタンスが17pSであることを明らかにした。さらに、このチャネルの活性は、細胞内GTPに依存し、またGTPの非水解性アナログであるGTP-γSにより、その活性が持続的となった。 最近、スフィンゴシン1リン酸は、ヒト血管内皮細胞の強力な増殖因子の一つであると報告された。本研究成果は、ヒト血管内皮細胞に対するスフィンゴシン1リン酸の新機能を明らかにしたものであり、非選択性カチオンチャネルがスフィンゴシン1リン酸誘発性の増殖反応に深く関わる可能性が高い。
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