脂質メディエーター受容体と脂質誘発性のヒト血管内皮細胞障害の関係

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13672293
• 研究機関: 名古屋市立大学
• 研究代表者: 村木 克彦 名古屋市立大学, 大学院・薬学研究科, 助教授 (20254310)
• キーワード: human endothelial cell / Ca / lipid mediator / endothelial dysfunction / cell death

研究概要

平成14年度においては、ヒト血管内皮細胞に対するスフィンゴシン1リン酸とパルミトイルカルニチンの相互作用について検討し、以下の結果を得た。尚この成果はJournal of Pharmacological Sciences誌に公表予定である(Journal of Pharmacological Sciences, in press 2003)。
単一ヒト臍帯静脈内皮細胞標本に細胞内Ca濃度測定法を適用し、スフィンゴシン1リン酸とパルミトイルカルニチンの相互作用について検討した。パルミトイルカルニチンの投与により、濃度依存的に細胞内Ca濃度が上昇した。この効力はスフィンゴシン1リン1酸と比較し、約30倍弱いものであった。またスフィンゴシン1リン酸に対する反応とパルミトイルカルニチンのそれは、有意な相関を示し、パルミトイルカルニチンがendothelial gene product (Edg)受容体に作用することを強く示唆した。さらにパルミトイルカルニチンに引き続いて、スフィンゴシン1リン酸を投与すると、スフィシゴシン1リン酸誘発のCa応答は、有意に減弱していた。
以上のことから、虚血時に細胞から遊離されるパルミトイルカルニチンは、内皮細胞に存在するEdg受容体に作用し、Ca応答を引き起こすと考えられる。また内皮細胞がパルミトイルカルニチンに暴露されると、スフィンゴシン1リン酸による細胞応答が阻害され、血管内皮細胞の増殖阻害・再生阻害が引き起こされる可能性が高い。

研究成果

• [文献書誌] K.Muraki, Y.Imaizumi: "A novel action of Palmitoyl-L-carnitine in human vascular endothelial cell"Journal of Pharmacological Sciences. (in press). (2003)
• [文献書誌] Y.Imaizumi et al.: "Molecular basis of pimaran compounds as novel activators of large conductance Ca^<2+> activated K^+ channel α-subunit"Molecular Pharmacology. 62. 836-846 (2002)
• [文献書誌] S.Ohya et al.: "Molecular and functional characterization of ERG, KCNQ and KCNE subtypes in rat stomach smooth muscle"American Journal of Physiology. 282. G277-G287 (2002)
• [文献書誌] Petrova et al.: "Advanced glycation endproduct-induced calcium handling impairment in mouse cardiac myocytes"American Journal of Molecular and Cellular Cardiology. 34. 1225 (2002)
• [文献書誌] Yamamura et al.: "Mechanisms underlying the activation of large conductance Ca^<2+> activated K^+ channels by nordihydroguaiaretic acid"Japanese Journal of Pharmacology. 89. 53-63 (2002)
• [文献書誌] 村木克彦: "平滑筋及び内皮細胞におけるCa関連イオンチャネル電流解析とCa動態 (総説)"日本薬理学会雑誌. 121. 143-151 (2003)
• [文献書誌] 木村克彦, 今泉祐冶(分担): "医学のあゆみ-イオンチャネルの最前線、血管平滑筋細胞イオンチャネルとリモデリング"医歯薬出版. 280 (2002)