閉経後骨粗髪症は女性ホルモン(エストロゲン)の分泌低下に起因する。本研究では初年度にエストロゲン合成酵素(アロマターゼ)の遺伝子欠損マウス(ArKOマウス)の骨組織を解析し、ArKOマウスは雌雄ともに骨粗鬆症を発症すること、エストロゲンの補充投与が雌のみならず雄マウスにおける骨量減少も正常化することを見い出した。さらに、最終年度である本年度において、エストロゲンとアンドロゲンの関係を明らかにすることを目的とし、雄性ArKOマウスに精巣摘出を施してエストロゲンとアンドロゲンの双方を欠乏させ、骨代謝に及ぼすアンドロゲン特有の作用について解析した。その結果、野生型(WT)マウスに精巣摘出を施してアンドロゲン欠乏とすると骨吸収の亢進による骨量減少が認められた。7週齢の雄性ArKOマウスに精巣摘出を施して4週目に大腿骨骨密度を測定したところ、ArKOマウスはエストロゲンの欠乏によって骨量が低下しているが、精巣摘出によってアンドロゲンが欠乏すると、さらに骨吸収が亢進して著しい骨量減少を示すことが明らかとなった。また、生後4週齢の野生型マウスに精巣摘出を施して、成長期にアンドロゲン欠乏としたところ、海綿骨の骨吸収が亢進するのみならず、皮質骨の骨形成が顕著に低下した。一方、性成熟が完了した7週齢の雄性マウスに精巣摘出しても、このような骨形成の低下は認められなかった。以上の結果より、性ホルモンの骨量維持作用について、エストロゲンの作用とは独立してアンドロゲンの骨吸収抑制作用が存在すること、アンドロゲンの骨形成促進作用は成長期の雄性マウスにおいて顕著であることが明らかとなった。
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