研究概要 |
がん細胞の接着性および運動性における上皮細胞由来因子とVLA-3インテグリンの役割について,メラノーマ細胞株A375およびMeWoを用いて解析した.両メラノーマ細胞株の運動性をボイデンチャンバー法により評価したところ,A431上皮様細胞株の培養上清の添加により促進されることがわかった.この運動性の促進活性は,Superose12によるゲルろ過クロマトグラフィーで高分子量(>200kDa)画分に回収され,また抗ラミニン5抗体によって吸収された.さらに,精製したラミニン5をボイデンチャンバーの下層に添加することにより,あるいはマトリゲルに混合して境界膜にコートすることによってもメラノーマ細胞の運動性が高まった.一方,抗α3インテグリン抗体を細胞に前処理することにより運動性が阻害された.これらの結果は,上皮様細胞から産生されるラミニン5がメラノーマ細胞表面に発現しているVLA-3インテグリンに作用し,細胞の運動性を亢進させていることを示唆した.また,ラミニン5を固相化したプレート上でA375細胞を培養することにより,マトリックスメタロプロテイナーゼの一つであるMMP-9が細胞から産生放出されることが判明し,これもメラノーマ細胞の運動性や浸潤性に関わっていることが推測された.
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