研究概要 |
本研究計画の平成13年度において、我々は脳内に存在する神経幹細胞から平滑筋細胞に分化誘導する系を確立し、この細胞を三次元培養して人工の平滑筋組織に構築すると、血管作動性アゴニストにより平滑筋様の収縮を発生することを見出した(Oishi K. et al., J. Physiol.,540,139-152,2002)。平成14年度では、神経幹細胞が平滑筋細胞のみならず内皮細胞にも分化し脳血管を形成する可能性を検討した。 神経幹細胞は、マウス胎仔(E12)脳より単離した神経幹細胞を含む細胞群を、bFGFを含む無血清培養液中でneurosphere法により培養調整した。神経幹細胞は、内皮マーカー蛋白質のVE-cadherin、PECAM-1、Flk-1を発現していた。神経幹細胞を増殖因子の代わりにFBS存在下で1x10^4 cells/cm^2の低密度で培養することで分化を誘導すると、細胞の一部が内皮マーカー蛋白質陽性の敷石上の細胞に分化した。次に、3日間分化誘導した細胞をコラーゲン(type I)ゲルに包埋し、bFGFを含む無血清培養液中で10%FBS存在下で5日間培養したところ、VE-cadherinやPECAM-1を強く発現した網目状の管腔構造が形成された。さらに、神経幹細胞をコラーゲンゲルに包埋し、FBSとhFGFを含むメディウム中で5日間三次元培養したところ、VE-cadherinやPECAM-1を強く発現した網目状の管腔構造が形成され、その構造の一部に、GFAP陽性細胞やα-smooth muscle actin陽性細胞が管腔構造の周りを取り巻く様子も観察された。以上のことより、神経幹細胞は血管を構成する平滑筋細胞のみならず内皮細胞に機能的分化することが明らかとなった。神経幹細胞より分化誘導した血管系細胞が脳血管の形成や再構築に関与する可能性が考えられる。
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