研究概要 |
本研究の目的は,免疫細胞上の補助刺激にかかわるリガンド/レセプター分子に対する特異的なヒト抗体(単鎖Fv抗体、scFv抗体)をファージディスプレイシステムによって作製し,その抗体を用いた免疫細胞の標的化と補助刺激シグナルの阻害による免疫反応の活性化の制御法を確立,そのシステムを応用した効果的なDNAワクチンのベクターの設計,開発を行うことである。 昨年度までに、APC上の補助刺激分子リガンドであるCD86に特異的に結合するscFv抗体ファージクローンならびに、T細胞の抑制性のレセプターであるCTLA4に対するscFv抗体ファージクローンの単離を進めてきた。本年度では、T細胞の活性化、ならびにB細胞の活性化分化に関わる補助刺激分子として近年見つかったICOS/B7RP-1に対するscFv抗体の取得に関する研究を新たに行った。我々のファージディスプレイシステムによって得られる抗体は、完全なヒト抗体であり、直接の臨床応用が可能である。特に本研究では、完全型のヒト抗体ではなく、大腸菌などでの安価な生産が可能なFv抗体を利用した免疫制御を目標としていることから、大腸菌でのscFv抗体の発現生産系の最適化も合わせて検討した。このようにして調製した抗体を用い、ヒト末梢血リンパ球を用いた細胞増殖試験を行い、補助刺激シグナルの遮断による免疫応答制御における効果を検討した。一方で、ウイルスベクターを用いた動物細胞でのこれらの抗体の発現系の確立を行い、実際に動物細胞における単鎖Fv抗体の発現ならびに発現された抗体機能の検討を行った。 以上の結果を元に、補助刺激分子を標的とした単鎖Fv抗体による免疫制御と効果的なワクチン開発への応用に関する方法論を考案した。
|