研究概要 |
本研究の目的は,免疫細胞上の補助刺激にかかわるリガンド/レセプター分子に対する特異的なヒト型抗体をファージディスプレイシステムによって作製し,その抗体を用いた免疫細胞の標的化と補助刺激シグナルの阻害による免疫反応の活性化の制御法を確立,そのシステムを応用した効果的なDNAワクチンのベクターの設計,開発を行うことである。成果として、T細胞の活性に関わるT細胞上の補助刺激レセプターであるICOSとそのリガンドであるB7RP-1との相互作用を阻害する抗B7RP-1ヒト抗体の開発を行い、その特許申請(出願中)を行った。得られた3種の抗ヒトB7RP-1抗体は、その阻害活性によって、T細胞の増殖を抑えることを示した。また、もうひとつの補助刺激分子であるCD28とそのリガンドであるCD86(B7-2)との結合を阻害するヒト抗体を開発しており、現在、特許申請準備中である。これらの抗体は、先に述べたように、補助刺激シグナルに対する阻害抗体として、機能するだけでなく、この抗体の標的とする補助刺激リガンド(CD86、B7RP-1)が、抗原提示細胞上に多く発現していることから、ワクチンにおいて重要な抗原の抗原提示細胞への標的化素子として利用することができる。本研究で得られた抗体を用いて、ワクチン抗原の抗原提示細胞への標的化の研究は、現在進行中である。予備実験として、補助刺激分子CTLA-4の細胞外ドメインを抗原(この場合はヒト抗体Fc)と融合させ、抗原の抗原提示細胞への標的化によるマウスでの抗体産生の効率化を図る研究を、DNAワクチンの手法によって検討した結果、抗原単独で投与した場合より、標的化素子としてCTLA4を融合させた場合のほうが、はるかに効果的な抗体産生を誘導できたことから、抗原提示細胞への標的化による免疫応答の効率的な活性化が、ワクチンにおいて非常に有用であることを明らにした。
|