研究概要 |
本研究はMRSA増殖抑制に関しC_<60>-bispyrrolidine誘導体がバンコマイシンにほぼ匹敵した効果を持つことに基づいており、さらに有効な抗菌活性を持つフラーレン誘導体を創製することを目的とし、平成13年度は1.増殖抑制機構の確立、2.C_<60>-bispyrrolidineの位置異性体の分離精製、および活性の測定等を行った。 1.抗菌活性の機構解析 大腸菌呼吸鎖電子伝達系、および真核細胞のミトコンドリアの電子伝達系を調製しフラーレン誘導体の効果を測定したところ、大腸菌増殖抑制や抗菌活性と呼吸鎖阻害活性に相関が認められた。これよりフラーレン誘導体は呼吸鎖を抑制することで抗菌活性を発現していると考えた。呼吸鎖よりフラーレン誘導体が電子を奪うことが考えられたので、フラーレン誘導体アニオンの検出を試みたがいまのところ成功していない。しかし、フラーレンアニオンが酸素分子を還元し活性酸素を生成していることを明らかにした。 2.C_<60>-bispyrrolidine誘導体の位置異性体の分離と活性測定 主な位置異性体としてt-2,t-3,t-4を精製した。これらの大腸菌生育抑制効果を検討したところ、いずれからも混合物より強い活性が得られた。また、位置異性体につき還元電位を電気化学的に測定したところ、一電子還元されやすい誘導体に強い阻害活性が見られた。この結果もフラーレンが呼吸鎖により還元されていることを示唆している。 以上の知見を基に、より有効な抗菌剤のデザイン・合成を平成14年度に行う。
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