研究概要 |
本研究はMRSA増殖抑制に関しC_<60>-bispyrrolidine誘導体がバンコマイシンにほぼ匹敵した効果を持つことに基づいており、さらに有効な抗菌活性を持つフラーレン誘導体を創製することを目的とし、平成14年度は1.アルキル基を有するC_<60>-bispyrrolidine誘導体の合成と呼吸鎖阻害活性の検討2.抗菌活性の検討、を行った。 1.アルキル基を有するC_<60>-bispyrrolidine誘導体を合成と呼吸鎖阻害活性の検討 フラーレン誘導体による抗菌活性の機構は生体膜に存在する呼吸鎖電子伝達系阻害であることを前年度示した。そこで、生体膜への取り込みを調整することを目的としてフラーレン誘導体にアルキル基を導入した。Hexyl基までの導入では呼吸鎖阻害活性は変化しないか、あるいは若干上昇する結果が得られたが、nonyl基を導入したC_<60>-誘導体では呼吸鎖阻害は見られなかった。 2.抗菌活性の検討 平成13,14年度に合成したC_<60>-誘導体の抗菌活性をバンコマイシンと比較した。C_<60>-bis(N, N-dimethylpyrrolidinium iodide)の活性が最も強く、MRSAへの効果も含め、ほぼバンコマイシンに匹敵した。また、これの位置異性体間で有意差は認められなかった。Butyl, hexyl基の導入では多少抗菌活性が低下し、nonyl誘導体には抗菌活性は見られず呼吸鎖阻害活性とほぼ一致した。また、C_<60>-bis(N, N-dimethylpyrrolidinium iodide)および、そのbutyl, hexyl誘導体はバンコマイシン耐性菌にも効果があった。 以上、C_<60>-bis(N, N-dimethylpyrrolidinium iodide)は新規抗菌剤リード化合物として有望なことを明らかとした。
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