研究概要 |
本研究は,個々の患者の状態や病態に適応可能な癌性疼痛管理をより容易にするために,最近注目されているハイドロキシアパタイトを用いて,自己硬化型アパタイトセメントを作製し,癌性疼痛に優れた作用をもつペンタゾシン(PTZ)を含有させた製剤を開発することを目的として,以下の結果を得た. 1)セメント製剤内に含有するPTZについて,その鎮痛作用と血液中動態との関係をラットにおいて解析し,その鎮痛作用をより定量的に評価するためには,血液脳関門での透過機構が重要であることを報告し発表した.その脳内取り込みには,主に飽和性を有する輸送担体が約8割関与していることが速度論的解析から明らかとなった.他の塩基性化合物によりその取り込みが阻害されたことから,この輸送担体は塩基性薬物を幅広く認識していることがわかった. 2)製剤となる自己硬化型アパタイトセメントについては,ニフェジピンを用いその物理薬剤的な特性を明らかにした後,in vitroにおける3種の溶出試験を用いて,その製剤からの薬物放出挙動を追跡し,放出速度を制御できるかを検討した.その溶出特性は,薬物放出に7日間以上の持続性が認められることが明らかとなった(現在投稿中). 3)上記1,2の基礎研究から,PTZ含有アパタイトセメントを作製し,その製剤学的な特徴ならびにin vivoにおける薬物放出特性を明らかにした.具体的には,アパタイトセメント製剤からの薬物放出は,薬物含有量に依存し,4%で48時間,10%ではさらに長時間にわたり持続し,その放出は,アパタイトセメント空隙細孔中の薬物拡散速度が律速であることが示唆された.In vivo実験としては,その製剤をラット皮下埋め込み型として投与しその薬物体内動態を評価した結果,薬物溶液の投与に比べ,平均滞留時間(MRT)が約3倍の増加が認められ,血液中と脳内に長時間滞留させることが可能であることが明らかとなった.
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